庄内竿のルアーフィッシング

最終更新日:2007年3月30日



「庄内竿」をご存知でしょうか?庄内竿というのは山形県 庄内地方で古くから作られてきた伝統の和竿です。その庄 内竿のルアーロッドを使ったルアーフィッシングについて 紹介していきます。もちろん主な舞台は横浜沖堤です。

◆庄内竿について
庄内竿は東北の山形県庄内地方に古くから伝わる伝統の釣 り竿で、他の地方の和竿とは違った独特の材料、構造のものです。
まず材料は庄内地方にしか見られないという「苦(にが) 竹」という竹を使います。そして、竿1本すべてをその竹 で作るというのが庄内竿の特徴でもあります。他の地方の 和竿では、1本の竿を数種類の竹から選った部材で構成し たり、竿先に鯨髭など別材料を使ったりします。しかし庄 内竿の場合は、まるまる1本の竹でそのまま1本の竿を作 るのです。参考文献の作者は、そのような庄内竿の特徴を 次のように表現しています。

「紀州、京都、江戸等の和竿は竹を素材として作っているが、庄内竿は竹そのものが竿になっている」

なるほど、言い得て妙ですね。したがって、継ぎのない 丸々1本の延べ竿というのが庄内竿本来の形と言えま す。ただ最近は持ち運びに便利なように数本継ぎのものが 多くなっているようです。
庄内竿の古いものは、山形県鶴岡市内の博物館などで見る ことができます。

【参考文献】
「庄内竿」(根上吾郎 著)

【参考サイト】
「随想 庄内竿」(根上氏のサイトです)
「庄内三代目碧水の館」

◆私の庄内竿ルアーロッド
私の所有するロッドは2003年5月に庄内地方酒田の黒 石釣具店(現在は庄内竿は扱っていないようです)で購入 したものです。店には黒鯛竿を始め様々な庄内竿が置いて ありましたが、その中にルアー竿があるのを目にしたのが 出会いでした。ちょうどその頃、ルアーによるシーバスゲ ームを始めたときだったので心が動き、衝動的に購入して しまいました。たしか5万円ほどだったと思います。

【主な仕様】
 ・長さ:2760mm(9尺相当)
 ・継ぎ:パイプによる2本継ぎ
 ・仕舞寸法:1450mm
 ・重量:元竿(111g)、先竿(27g)
 ・パワー:ライト
 ・テーパー:レギュラー相当
 ・ガイド数:9

それでは、実際のものを見ながら説明しましょう。

竿 尻
竿尻には木製の栓がしてあります。まっ
たく実用本位という感じで、何の装飾も
ありません。構造がどうなっているのか
はわかりませんが、固定のために巻いて
ある糸は漆で固められています。
リールシート
リールシートはご覧のようにペラペラの
板金ものです。とても5万円の竿につい
ているものとは思えません。私の2万円
の落とし込み竿にさえ、チタン製のリー
ルシートがついているのに・・・。
シートが取り付けられている部分の竿の
太さはシートの幅よりも細いのです。
取り付けた状態
リールシートにリールを取り付けた状態
です。この状態で竿を握るわけですが、
グリップがあまりに細いので、最初は
とても持ちずらく感じます。手の当たり
にも気を配っている最近のロッドデザイ
ンと比べると、なんともぶっきらぼうな
ものです。実際、長時間持ち続けると、
シートの手に当たる部分が痛くなってき
ます。
元ガイド
元ガイドを入れて手前から4個は、この
ようなシングルフレームのSICガイドで
す。最近のルアーロッドでは元ガイドは
かなり大きめなのが普通ですが、これは
けっこう小さめです。最初はこんなもの
でスピニングリールが使えるのかしら?
と思ったのですが、他のロッドに較べて
それほど遜色なく使えています。
中間ガイド
そして特徴的なのが1番から4番までに
装着されているこのスネークガイドと
呼ばれるワイヤー製のガイドです。
たぶんステンレスだと思うのですが。く
るりと「ひねり」を加えられた針金でで
きた実にシンプルなガイドです。現在PE
ラインを使っていますが、使い慣れてい
なかった頃に、リールシートと逆の方向
に竿をしならせて魚をいなそうとした時
に、ラインがこのガイドと竿の間の隙間
に挟まってブレイクしたことがあります
その他にも、PEのようなしなやかで細い
ラインの場合には、糸絡みなどが起きや
すいように思います。
トップガイド
トップにはまたSICガイドが装着されてい
ます。写真を見てわかるように、竿の先
まで竹そのものです。
継ぎ手
このロッドが2本継ぎなのですが、継ぎ
手には、このような真鍮の「パイプジ
ョイント」が使われています。一見イ
ンロー継ぎのようですが、パイプにはち
ゃんとネジが造りこまれており、ねじ込
んで接続します。
つないだ状態
これが接続した状態です。不思議なこと
に最後までねじ込むと、そこできちんと
止まって、ガイド位置もぴたりと合うよ
うになっています。
全体のカーブ
組みあがった竿を置いてみると、このよ
うに湾曲しています。最初はこれほど曲
っていなかったと思うのですが。でも、
使う分には全く支障がないので、このま
まにしておきます。
なんとなく、子供の頃にフナ釣りで使っ
た素朴な竹竿を思い出します。

◆私の庄内竿タックル(07年4月現在)
現在、この竿を使っての釣りは、ほぼ100%横浜港内で のシーバスゲームですので、タックルは決まっています。

・リール1:'98Stella3000(SHIMANO)
・リール2:PENN4400ss(PENNREEL)
・ライン:FireLine8LB(Berkley)
・ショックリーダ:VARIVAS ShockLeader16LB(MORRIS)
・ルアー:Live Bait Vibration Blade 24g(DUEL)

本来ならルアーは様々なものを用意するのでしょうが、私 の場合はこれのみです。カラーも、ほとんどの場合「レイ ンボウ」のみです。

◆庄内竿の釣り味
それでは、庄内竿の「使い心地」について述べてみましょ う。まず、カーボンロッドから持ち替えて驚くのは、とに かくふにゃふにゃに柔らかく感じることです。つまり竿の パワーに依存することは、ほぼ無理、といった印象です。 それなのに、この竿は60センチ超のスズキでも平気で上 げてしまいます。しかも、面白い!
スズキといえば、ご存知のように、ルアーにかかってから の暴れようといったら、他の魚と比較になりません。その スズキをこのふにゃふにゃの竿でいなしていくのは、とて もスリリングでエキサイティングであることに気付いてか らは、その虜になったほどです。
要するにこの竿は、パワーではなく、竹の独特のしなりを 最大限に活かして釣るものなのです。カーボン竿のように 竿のパワーに任せて、魚を寄せてくるのではなく。魚がか かったら、とにかく無理に寄せるようなことはせずに、竿 を立てて、竿のしなりの中で魚を遊ばせ、ひたすら魚 が力尽きるのを待つのです。
柔らかいからといって感度が悪いかというと、そうでもあ りません。フォーリング中のかすかなアタリさえもちゃん と感じさせてくれます。
それに、これはひいき目かもしれないのですが、カーボン 竿よりも「ばらし」が少ないように思うのです。竿が柔ら かいせいか、魚の動きによるラインへの荷重変化を吸収す るバッファーになっているというか。ルアーをはじいてし まうようなことが少ないように思われるのです。
PEラインはとかく魚にやさしくない、と言います。言い訳 ではないですが、その分、この庄内竿を使うことで多少は 魚にやさしくなっているようにも思えます。

◆庄内竿の釣果例
2003年6月14日 旧白灯台にて:フッコ60cm
2006年9月15日 旧白灯台にて:マゴチ43cm
2006年11月29日 旧赤灯台にて:フッコ63cm


◆庄内竿の手入れ
庄内竿は「実用百年、手入れがよければ千年の命」と、 根上吾郎(「庄内竿」の著者)も言っています。
庄内竿は他の和竿と違って、竹の表面には漆が塗ってあり ません。せいぜい枝が出ていた跡を埋めるのに使っている 程度です。基本的には木ロウで磨いてあるだけです。した がって、水濡れにはあまり強いとは言えません。カーボン 竿のように水道でジャブジャブと洗うことは避けたほうが よいでしょう。
私の場合は、釣行から帰ると、ぬるま湯に浸して固く絞っ た布で、かるく塩分を拭き取り、その後で乾いた柔らかい 布で磨きます。これだけです。
月に1度程度、ロウを塗ります。といっても、そんなにぶ 厚く塗りこむわけではありません。ガーゼのような布に木 ロウを包み、それで竿の表面をこすります。そして、その 上を乾いた柔らかな布で磨きます。
太陽の下で長く使っているうちに、だんだん色が焼けてき て飴色になり、風格がでてくるのを見るのも楽しいもので す。これは、カーボン竿などにはない楽しみですね。使え ば使うほど「自分のものになっていく」感じです。

庄内竿という伝統和竿によるルアーフィッシングの紹介 は以上です。最新技術を駆使したロッドでの豪快なゲー ムもいいですが、このような素朴で自然な道具を使った スリリングな釣りもいいものです。機会があったら、 ぜひお試しください。


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