庄内竿のリペア

最終更新日:2008年10月3日

2008年8月10日、長年愛用してきた庄内竿がボッキ リと折れてしまった。これまでガイドを取り替えたりして 自分仕様にして大事に使ってきた竿だけに、このまま退役 させてしまうは、なんとも忍びない。
そこで、様々なパーツを利用して、なんとかルアーロッド として復帰させるべく、リペアプロジェクトを開始。 その経過を、紹介します。

■庄内竿の破損状況
竿は写真のようにリールシートの取り付け部近くで折れて ささくれています。よく見ると、竹の上部には、約10セ ンチにわたって割れ目も見えます。たぶん、この割れ目が できたせいで、急激にこの部分の強度が低下して折れたも のと思われます。
また、リールシートの端から折れたということは、硬い金 属シートの端にあたって、この部分に負荷が集中していた と考えられます。

■修理の考え方
竿を修理するにあたり、破損の状況から、元と同じ状態に 復元することは不可能と判断しました。元通りにするには 元竿を全く新しい竹で作るしかありません。しかし庄内竿 の最大の特徴は、竿全体を1本の竹で構成することにあり ます。私はその考え方を尊重し、敢えて元と同じ形に復元 することを目標にしないことにしました。
それではどのようにしてルアーロッドとして復活させるか ですが、折れた部分をグリップキットで覆ってしまう、と いう考え方です。(写真の上はオリジナルの庄内竿、下が 新たに取り付けるグリップキット))
つまり、折れた竹は中に芯材を埋め込んで、一応接合しま す。そして、その上にグリップやリールシートを取り付け てしまおう、というものです。
元々はリールシート部もグリップ部も、細い竹のままでし たが、リペア後はコルク製のグリップがつくことになりま す。オリジナルからはずいぶん違ったイメージになってし まいますが、ルアーロッドとして蘇ってくれれば、という 願いから、そうすることにしました。
実際に使用するパーツの選択や加工方法は、作業を進めな がら決めていくつもりなので、最終的な仕様はどうなるこ とかわかりません。

■リペア日記
2008年8月14日(前処理)
まず、庄内竿に装着しているガイドと、リールシートをはず します。はずし方は「庄内竿の改造記」を参照してください。
そして、折れてざくざくになった端面を切り落として、やす りで平らに整形します。
2008年8月15日(インロー継ぎ)
折れた2本の竿をつなぐには、中に芯材を差し込んで固定し ます。インロー継ぎのようなものです。芯材に使うのは竹製 の菜箸(さいばし)です。これが太さもちょうどよく、竿と 同じ竹材なので弾性も似ていてよいと考えたからです。
少し太さが足りないので、写真のように糸を巻いて調整しま す。糸を固定するには瞬間接着剤を使いますが、糸や竹に滲 みこんでしまわないよう、ゼリータイプを使います。
糸を巻いた部分に、エポキシ系の2液性接着剤を塗り、竿に 挿し込み、固定します。接着剤は急速硬化性ですが、時間を かけて十分に固着させます。
2008年8月18日(接合)
先に継ぐ部分にも太さ補正用の糸を巻いておきます。これも 瞬間接着剤で糸をしっかりと固定しておきます。
芯材に2液性エポキシ接着剤を塗り、竿を挿し込みます。こ れで写真(上)のように、なんとかつながりました。
竿には繊維方向に割れ目もあったので、芯材でつないだだけ では不安なため、写真のように補修糸を巻いておきます。
補修糸には2液性のコーティング剤を塗り、固めておきます
8月18日〜24(コーティング乾燥)
コーティング剤はなかなか固まりません。塗ってから3日た っても、表面がべたついています。ここは強度に大きく影響 するところなので、焦らずに時間をかけてじっくりと乾燥さ せます。
8月24日(グリップ装着)
コーティングが乾燥したところで、いよいよグリップの装着 にかかります。その前に、竹の太さに合わせて、グリップの 内径を広げます。穴の長さが20cm以上もあるので写真の ような「ヤスリ棒」を作りました。これは菜箸にサンドペー ペーを巻きつけたものですが、コルクを削るのにとても使い 勝手がよく、重宝しました。
十分な内径になったところで、今度は隙間をふさぐためにタ コ糸を巻きつけます。穴の削りで調整すると言っても、竹材 には「節」があり、これに合わせて内径を削ると、他の部分 がゆるゆるになってしまうためです。糸は2液性の接着剤で 固めます。
糸が固まったら、いよいよグリップを差し込みます。糸を巻 いた竿側に2液性のエポキシ系接着剤を塗り、グリップを差 し込んでいきます。このとき、ガイドの取り付け方向に注意 しなければなりません。
同じ要領で、リールシートパイプも装着します。これで大方 のイメージになってきました。
8月25日〜(乾燥)
グリップ固定用の接着剤は速乾性なのですぐに固まるのです が、現在、エンドキャップ、フックキーパー、ワインディン グチェックを注文中なので、それが到着するまでとりあえず 作業を中断して接着を落ち着かせることにします。
8月28日(新規パーツ取り付け)
新規のパーツが納品されたので、それを取り付けることにし ます。上の写真が、今回新規に購入したパーツです。左から 「エンドキャップ」「フックキーパー」「ワインディングチ ェック」です。
まずはフロントグリップにワインディングチェックを取り付 けます。ワインディングチェックの外形に合わせて、フロン トグリップの先端部の穴径を広げておきます。
そうしてワインディングチェック側に2液性のエポキシ系接 着剤を塗り、フロントグリップの穴に挿し込みます。これで 取り付けは完了です。ワインディングチェックは特になくて もいいのですが、見栄えを良くするのと、フロントグリップ のコルク先端部を保護するために装着しました。
次にリールホルダーにフロントグリップを取り付けてしまい ます。このリールシートはフロントグリップとリールホルダ ーが一体になっているタイプ(HLタイプ)です。
リールホルダー側にエポキシ系接着剤を塗り、フロントグリ ップを挿し込みます。これで完成です。
次にエンドキャップの取り付けです。これもエンドキャップ 側にエポキシ系接着剤を塗って、リアグリップ(実際には中 の竿の尻穴)に挿し込み、固定します。
これでグリップ部は完成しました。ここが、以前の庄内竿と は最もイメージが異なる部分になります。
8月29日(ガイド取り付け)
最後に、作業のためにはずしておいたガイドを取り付けます その前に、今回新規に購入したフックキーパーも取り付けま す。(写真上)
全体に地味なので、フックキーパーの取り付けには赤の補修 糸を使ってみました。ガイドやフックキーパーなどの取り付 け方法については、「庄内竿の改造記」をご覧ください。
フックキーパーと同様な方法で、ガイドを取り付けます。補 修糸には2液性の塗料を2度塗りして補強しておきます。

庄内竿リペアの完成で〜す!!
これでリペアが完成しました。あとは試し釣りを行うだけです。
でも焦らず、塗料や接着剤が十分に固着するまで待ちましょう。
次は「試し釣り」の結果報告を行います。

■試し釣り報告
2008年9月21日
リペア完成後、初めての釣行は9月21日。釣行記にも書い たが、これが最悪の試し釣りとなってしまった。
結果的には、まず実用には耐えられそうな印象だった。むし ろグリップが以前よりもしっかりとしたので、キャストはし やすいし、竿のコントロールもやりやすい。最初は恐る恐る キャストをしていたのだが、慣れてくるにつれて力が入って くる。それでも、竹本来のしなりでルアーを十分に飛ばして くれる。このコンディションは、むしろ以前よりもよくなっ ているようだ。
そこでアクシデントが起こった。またもや、あのいまいまし い「エイ」をかけてしまったのだ。それもけっこうな重さ。 ラインを切ってしまえばいいのだが、ルアーロストがいやで しばらく格闘することに。修理したての竿が根本からしなっ ている。それでも、庄内竿の粘りはたいしたもので、エイを 弱らせるほどに耐えてくれた。最後にはラインを手で引っ張 り。ショックリーダごとロストするはめになってしまった。 そのうえ、予想以上に激しい雨が降り、修理したての庄内竿 には散々の釣行だった。
それでも、なんとか40センチクラスのセイゴを上げて、修 理後初の釣果はできた。(写真下)
2008年9月28日
修理完成後2度目の釣行。今回は折れることはなさそうなの で予備のロッドは持たずに行った。天気もまずまずで、気持 ちよく釣りもできそうだった。魚の反応はあまりないものの 竿の調子を見ながら、さまざまな重さのルアーを試してみた。 普段は24gほどの重いルアーを中心に何気なく使っていた のだが、今回、重量を気にして投げてみると、15g程度の ものが最もストレスなく使えるように感じた。レンジバイブ であれば7cmクラス。その他、BlueOceanのシンキングミノ ーなどを楽に遠くまで飛ばせることがわかった。竿のしなや かさによるものだろう。
と、快適にキャストを続けていたのだが、ふと手元をみてビ
ックリ!フロントグリップにパックリと裂け目が入っていた のだ。あららららら!!
それで、そこを見ながら軽くキャストをしてみると、後ろに しならせた時に割れ目が開くことがわかった。これを意識し ながら投げてみると、確かにキャスト時には竿の手元までし なりがあることがわかる。これでは、これ以上キャストを繰 り返すとグリップが完全に折れてしまいそうだ。(写真下)
どうしたものかと考えてみたのだが、今さらグリップを交換 することもできず、とにかく応急処置をしてみることに。
グリップ自体は加重を支えているわけでもないので、キャス ト時の指のグリップを受けられればいい。そこで、グリップ 全体をテープで補強することにした。つい先日のNHKの番 組(DIY系)で、屋外の配線保護に使用する特殊なビニー ルテープのことを紹介していたのを思い出し、早速ホームセ ンターに探しに行った。それは「自己融着性絶縁テープ」と いうもので、引っ張りながら巻きつけると、テープ自体が密 着していく。商品名は「タイタックテープ」で300円程度 で買える。これを巻きつけると、写真下のようになった。ち ょっと見栄えは悪いが、まずはこれでいってみよう。


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