釣りの本

最終更新日:2007年5月17日

趣味としての魚釣りの楽しみ方は人それぞれでしょう。魚 釣りのキャリアによっても楽しみ方は変わっていくもので す。また、魚釣りをきっかけに様々なことに興味や関心を もつことでしょう。そんなときに手にした一冊の本が、新 たな釣りの楽しみ方を広げてくれることもあります。
私もそれほど多くの本を読んだわけではないですが、本棚 から数冊を紹介して、皆さんの釣りの楽しみを深める役に 立てれば、と思います。
中には絶版になっている本もあるかもしれませんが、ご了 承ください。

釣魚大全T
著者:アイザック・ウォルトン/発行:平凡社
いわずと知れた魚釣りの世界的バイブルですね。とにかく 全編にわたり、英国の川での魚釣りの様子が淡々と書き綴 られています。英国の釣りというとフライフィッシングの ように思いがちですが、本書ではえさ釣りについても多く 書かれています。出てくる魚も日本ではなじみのないもの も多いのですが、そんなことを気にせず、自分でも一緒に 釣行しているような気分で楽しく読めばいいでしょう。随 筆家でもあり、伝記作家でもある筆者の格調高い文章も同 時に楽しみたいものです。
ちなみに、「T」とありますが、この続編として、チャー ルズ・コットンによる第二部、ヴェナブルズによる第三部 もあり、これらはフライフィッシングが中心にまとめられ ているようです。

ロッドクラフト
著者:大村隆一/発行:富士工業株式会社
釣竿のガイドなどロッドパーツでは世界規模のシェアを有 する富士工業の社長である大村氏の書いた本ですので、ま さに基本をしっかりと押さえたロッドクラフトの書である といえます。釣り竿を自作したり、自分で修理しようとし たときに、まず最初に読みたい本です。発行されたのが1 980年ですので、ごく最近の技術は載っていませんが、 ガイド付き釣り竿の基本的な知識を正確に身に付けられる 内容です。たぶん絶版になっていると思いますが、もし偶 然に書店や釣具屋さんで見つけたら、買い求めておいて損 はないでしょう。

さかな異名抄
著者:内田恵太郎/発行:朝日新聞社
釣りをする人でなくても、魚の名前が土地によって異なる ことが多いのはご存知でしょう。この本では、いわゆる学 名ではなく、各地で呼ばれる一般呼称について書いてあり ます。淡水魚、海と川を往復する魚、沿海の底魚など、棲 息域にごとに記述されているのも、いかにも魚類学者らし いところです。普段、何気なく呼んでいる魚の名称が地方 によって、全く違っていたり、その面白い由来など、釣り をより楽しむのに有効な本です。

現代魚食考
著者:成瀬宇平/発行:丸善株式会社
魚は日本人にとって古来より重要な食材だが、この本では 食材としての歴史、そのうまい食べ方などを紹介していま す。とくに冒頭では、魚のうまさとはなにか、何でうまさ が決まるのか、など魚を食べるうえでの基本的な知識を紹 介してくれます。お店でおかずとして魚を買う際にも、き っと役立つ一冊でしょう。ただ、レシピなどの載っている 料理本ではないので、あしからず。

つり百景
著者:金森直治/発行:つり人社
これは、なんていうか、魚釣りに関する短文の随筆集みた いなものです。1ページに1話程度にまとめられていて、 魚釣りの様々なエピソードや、ウンチクなどがちりばめら れています。どこから読んでもいいので、時間の空いた時 にちょっと読むのにはいい本かもしれません。

随想 庄内竿
著者:根上吾郎/発行:フィッシュオン
これは庄内竿を購入した折に、竿の由来や特徴などを知っ ておこうと思い、購入したものです。自らを「道楽者」と 称する筆者は釣り好きが高じて釣具屋になり、以降40年 以上にわたって庄内竿を作り続けてきました。一冊まるご と庄内竿のすべてを書き記しています。材料のニガ竹のこ とや、加工方法などについても、ノウハウ本としてよりも 随想風に書いてあり、読み物として楽しみながら庄内竿を 知ることができます。巻末には、カラー写真で庄内竿制作 のプロセスも紹介しています。ただ、この本は一般書店で は販売されていない自費出版本ですので、入手希望の方は 「フィッシュオン根上釣具店」にお問い合わせください。

「何羨録」を読む
著者:小田 淳/発行:つり人ノベルズ
「何羨録」(かせんろく)というのは、日本最古と言われ る釣り専門書のことで、江戸享保八年に書かれたものです 当時の釣具や釣り方が記述されている貴重な歴史資料であ り、自分の今の釣りのルーツを知ることができます。本書 はその現代語訳です。これを見ると、現在の釣りの原型は 非常に早い時期に出来上がっており、今目にする道具や釣 り方は、その延長または派生にすぎないことがわかります 釣りは一生の趣味、と言われますが、一生釣りを続けたい と思う人は、一度これを読んで、自分なりの釣りのスタン ディングポジションを確認してみてはいかがでしょうか。

江戸の釣り
著者:長辻象平/発行:平凡社
趣味の釣りというのは、日本ではいつごろから始まったの でしょうか?本によっては、平安の頃にもそれに近い記述 もあるようですが、この本では「遊びの釣り」は江戸時代 に始まったとしています。それが始まった理由、そしてど う普及していったかを興味深く知ることができます。また 江戸時代と現代の趣味としての釣りの違いを知ることで、 自分の釣りを振り返ってみることができるでしょう。江戸 時代の釣りは「釣果より釣趣」とあります。テクノロジー を駆使して釣りまくることを追及しがちな現代の釣りに対 して、なんという豊かな発想でしょう。そんなことも感じ させてくれる本です。

フィッシングノット事典
著者:丸橋英三/発行:地球丸
魚釣りの仕掛け作りには、「結び」の技術が欠かせません。 糸同士を結んだり、針に糸を結びつけたり。そして、その 状況によって様々な結び方を使い分ける必要があります。 糸の太さや材質に合ったノットを使用しないと、大事な場 面で失敗をしてしまいます。
この本は、ルアーの大物釣りで著名な筆者が、自らの体験 をもとに、様々なノット(結び方)を紹介しています。前 半では釣り糸の種類や変遷の解説もあり、自分の仕掛けを 見直すのにも参考になるでしょう。
ノットに関してはこれ1冊あれば、十分です。

魚になめられてたまるか!
著者:豊田直之/発行:廣済堂出版
魚釣りに関しては様々な「定説」があります。潮が動くと 食いが立つとか、東風が吹くと云々とか。しかし、そのほ とんどが、漁師や釣り人の経験に基づいて憶測されたもの であり、科学的に証明されたものはほとんどありません。 本書は、釣り人でもあり海洋フォトジャーナリストでもあ る著者が、そうした悶々とした釣り人の疑問に答えるべく 自ら水中に潜って、様々な実験観察をした結果を報告して いる、きわめて興味深い一冊です。
科学的に分析することが、趣味としての魚釣りの楽しみを 増大させるかどうか、それは人それぞれでしょうが、海面 を隔てた水中の世界を、少しだけ自分に近づけてくれる本 として楽しく読めばいいでしょう。

全・東京湾
著者:中村征夫/発行:新潮社
水中カメラマンとして著名な筆者が、こよなく愛する東京 湾の実態を、豊富な写真と味のある文章で紹介してくれま す。生活排水で汚れに汚れ、ヘドロに覆われた死の海、と 思われがちな東京湾で、実は様々な生物がたくましく生き 続けています。筆者はそれらの生物に愛おしさをもってカ メラを向け、会話をしています。
海に対して、人間はどこまで傲慢でいられるだろうか?そ んなことを、つい感じてしまう一冊です。

0(ゼロ)の魚拓
著者:ぎぼういさお/発行:朔風社
いわゆる釣行記本なのですが、この妙なタイトルに惹かれ てつい買ってしまいました。筆者は魚釣りをこよなく愛す る元高校の校長先生。この先生は釣行の度に獲物の種類や 大小にかかわらず魚拓を残すのが習慣となっていました。 「ゼロの魚拓」というのは、言ってみれば「ボウズ」の時 の魚拓で、魚拓帳のページに筆で「0」が書いてあるもの です。この余裕。心の余裕で楽しむ釣りは、わたしの憧れ る姿なのです。

山里の釣りから
著者:山内 節/発行:岩波書店
主に渓流釣りをたしなむ筆者は、哲学を専門とする方で、 この本も所謂ただの釣行記ではありません。渓流釣りの主 な舞台である山里について、都市生活とのかかわり、自然 と人の関係、山里における労働観など、深い考察を行って います。たかが釣り場で、よくもここまで考えられるもの だと感心しますが、「最近、めっきり魚が少なくなったな あ」などと感じている多くの「消費者的立場」の釣り人た ちに読んでいただきたい一冊です。

川釣り
著者:井伏鱒二/発行:岩波書店
これは釣行記などというものではなく、完璧な文学作品で あります。もちろん、内容は渓流釣りにちなんだ様々なエ ピソード集ではありますが、少しだけ昔の、なんとも言え ない情緒を楽しみながら、ゆっくりと読んでみてください いくつかの随筆や短編小説を集めたものなので、読書に飽 きやすい人でも読めるかと思います。

東京湾で魚を追う
著者:大野一敏、敏夫/発行:草思社
「東京湾で魚を追う」と言っても、趣味の魚釣りの話では ありません。これは、東京湾船橋漁港の漁師さん親子が書 いたものです。東京湾に漁業なんてあるの?と思われるか もしれませんが、東京湾はこれだけの都会に囲まれた海で あるにもかかわらず、魚は豊富に棲む稀な海なのです。水 の汚染や冨栄養化によって、様々な支障は出てきています が、まだまだ自然を相手にした漁業が営まれています。親 子2代にわたる漁師のさまざまなエピソードから、東京湾 の意外な姿が見えてきます。

わたし琵琶湖の漁師です
著者:戸田直弘/発行:光文社
これも漁師さんの書いた本です。これは淡水の漁ですが、 様々な漁の方法の紹介や、筆者が一人前の漁師になるまで のエピソードに加え、昨今、問題になっている外来魚(ブ ラックバス、ブルーギルなど)に対する怒りなども書かれ ています。そんな中、筆者はこよなく琵琶湖を愛し、そこ での暮らし、漁を心から愉しんでいることを感じさせてく れます。

海に何が起こっているか
編集:関 文威、小池勲夫/発行:岩波書店
全地球の約7割を占める海に、今、何が起こっているのか を豊富なデータで示してくれます。表紙の想定はいかにも ユーモラスですが、実際に海で起こっていることは、我々 人間の生活にも深刻な影響を与えるものです。各分野にわ たってそれぞれの専門家30名以上が執筆し、それらを編 集したもので、今の海の状態を様々な視点から知るのには 最適な一冊でしょう。


「横浜沖堤釣魚三昧」表紙に戻る